私は、あなたを死ぬほど嫌いだ。一切に対し無自覚で、自信家で、誇り高いただのクズと認識している。あなたは、欺瞞こそ人間にとって至上の快楽である、と、何処の文学作品から引いてきた文言か知らないが、鼻の穴かっ開いて、偉そうに説く。文学を信仰している。文学者の記述する所、それこそ完全無欠の、この世の真髄であると。自分を立派に見せる添え物。文学以外の文章を軽蔑する。それにも又無自覚。私は勘付いている。人には人の教祖的存在があるが、それを蹂躙する権利は無い。あなたは無自覚に粉砕する。私の好むところを悉く。あなたを許さない。自分の言動挙動に無自覚。性欲の奴隷である自分に対する認識を、無意識の闇に葬り去るから、平気な表情で幾度でも嘘を吐く。私は騙されている。あなたにとっての私という存在とは、容れ物だけがあれば良い。中味には目を瞑るから、外見だけは、確かに。その心理がありありと想像できて、反吐が出る。私の肉体をここまで支配した、周囲に触れ回り、羨まれるのも楽しい。あなたを許さない。私は騙されてきた。あなたが大勢と出掛ける時、いつも憂鬱になる。私は善いツール、善い肴である。一人でいる時、何時もあなたを思ってはフツフツと憎悪の念でハラワタが煮えたぎり、殺してやりたい衝動に駆られる。ええ、知らないでしょう。次に会ったら、私の認識している事柄について全てぶちまけて、種明かしを食らう前に、此方からメチャメチャに、罵詈雑言を浴びせてやろうと、いつも打ち震えているのですよ。ところが、顔を合わせて見れば、どうした事か、そういった私の憎悪の類は、空気と漂って、何処かしらへ雲散霧消する。馬鹿になるのだ。あなたと対するに限った話ではない。人と対面すれば、彼と私との間の気を心地よく循環させるのに苦心して、自分の主張どころでは無くなってしまう。空気に勝つ事がどうしても出来ない。人人の間に漂う空気が、平生の私の信念を瞬時に悉く崩壊させる。何もかもを駄目にする。私はこの自分の性質を心の底から怨んでいる。ヘラヘラとしたまま別れた後の、私の言い様の無い憤怒、それ以上の自己嫌悪。表面的に、あなたを許している。分からないでしょう。あなたを許さない。あなたに復讐する為に、あなたから離れないのかもしれない。もはや今、私の人生は、あなたの為だけにあるのですよ、あなたという赤の他人に寄り掛かる以外の、生活を続ける意味なんて、あなたの出会う前から殆ど失っていますから。あなたを強迫的な自覚のスパイラルに陥し入れるような、最高の地獄を味わわせてこそ、私は生を全うすることが出来るような心持ちでさえいます